RPA(Robotic Process Automation)は、PC上で行う業務をソフトウェアロボットが代行し、業務を自動化する技術です。 RPAは仮想的なロボットであり、物理的に動くロボットではありません。 近年、人手不足や生産性向上が課題となる中で、RPAは注目を集めています。
RPAで自動化できる業務の特徴
RPAは、あらかじめ決められた手順やルールに基づいて行われる「定型業務」の自動化を得意としています。この「定型業務」とは、手順が明確に定義されており、ルールに従って繰り返し行われる作業のことです。RPAが効果的に活用できる業務には、いくつかの特徴があります。
まず、作業の手順が決まっていてマニュアル化されている「定型化された業務」です。このような業務では手順が一定であるため、RPAのプログラムが業務フローを正確に再現し、自動化しやすくなります。
次に、「大量のデータを扱う業務」もRPAに向いています。データ量が多い業務では、手作業に比べてRPAを導入することで効率性が格段に高まるため、業務処理が大幅にスピードアップします。
さらに、「反復的に行われる業務」においてもRPAは効果的です。同じ作業を繰り返す場合、RPAを活用することで時間やコストを削減し、正確で安定した処理を実現できます。
このように、RPAは特に定型化されていてデータ量が多く、かつ反復的な作業を自動化する場面で高い効果を発揮します。
RPAで自動化できる業務例
以下は、RPAで自動化できる具体的な業務例です。
- データ入力・転記・照合: 各種データの登録・更新・変更、請求書入力、経費処理、発注・受注、納品など
- レポート作成: 日報、週報、各種報告書、売上日報、競合価格調査など
- Webサイトからの情報収集: 競合他社の価格情報収集、SNSの口コミ収集など
- システム連携: 社内外のシステムへのログイン、データ抽出・入力、SFAへの入力、ネットバンキング操作など
- メール送信: 定型メール送信、リマインドメール、問い合わせ対応、通知メールなど
- 勤怠管理: 勤務時間の集計、残業時間の確認、有給休暇の残日数確認、給与計算など
- 経費精算: 交通費精算、経費精算の承認処理など
- 請求書発行: 請求書作成、発行、送付など
- 入金消込: 入金データと請求書データの照合、消込処理、未入金リスト作成など
- 在庫管理: 在庫数や出荷予定数の確認、在庫状況の通知など
- 顧客情報登録: 顧客情報のシステム登録など
RPA導入の際の注意点
RPAの導入には多くのメリットがありますが、注意が必要な点も少なくありません。まず、RPAが対応できるのはあらかじめ決められたルールや手順に従う定型業務に限られます。人の判断が求められる非定型業務や、手書き文字や画像の解析が必要な業務には対応が難しいため、導入を検討する際には業務の種類に注意が必要です。
また、導入にはRPAツールやコンサルティングの費用がかかるため、初期コストも考慮しなければなりません。さらに、RPAはシステム変更や業務フローの変更に対応するため、定期的なメンテナンスが欠かせません。
属人化を防ぐことも重要です。特定の担当者だけがRPAの操作方法やシナリオの内容を理解していると、担当者が不在の際に対応が難しくなります。そのため、チーム全体での情報共有を徹底しておく必要があります。
また、システムエラーやシナリオの誤りが原因でRPAが停止したり、誤った処理を行ったりするリスクもあります。エラーが発生した際には迅速に対処できる体制を整えておくことが重要です。このように、RPA導入は決して万能ではないため、運用におけるリスクと対応策をあらかじめ検討しておくことが成功のカギとなります。
RPA導入による業務効率化のメリット
RPA導入による業務効率化のメリットは、多くの資料で言及されており、大きく分けて以下の3つのカテゴリーに分類できます。
コスト削減効果
RPAは、これまで人手で行っていた定型業務を自動化することで、人件費や残業時間を削減できます。 特に、大量のデータ処理や繰り返し作業が多い業務では、RPAによる自動化によって大幅なコスト削減が可能になります。 例えば、月給30万円の社員10名で行っていた業務をRPAによって自動化し、社員3名で進められるようになれば、7名分のコスト210万円を削減できます。
業務品質向上効果
RPAは、人間と比べてミスが少ないため、業務品質の向上に貢献します。 例えば、請求書作成業務において、RPAは入力ミスや転記ミスを防ぎ、正確な請求書を発行できます。 また、入金消込業務では、RPAは入金データと請求書データの照合を正確に行い、消込漏れや誤りを防ぐことができます。
従業員満足度向上効果
RPAは、従業員を単純作業から解放し、より創造的な業務に集中させることで、従業員満足度を向上させることができます。 従業員は、RPAによって生まれた時間を、顧客対応や企画立案、スキルアップなど、よりやりがいのある業務に充てることができます。
生産性向上
さらに、ロボットによる作業はミスが少ないため、業務品質の向上につながり、ヒューマンエラーを防止することができます。RPAは24時間365日休むことなく稼働できるため、業務の処理スピードも飛躍的に向上します。
RPAは、導入効果が高い反面、導入前に適切な業務を選定したり、シナリオを正しく設計したりするなど、注意すべき点もいくつかあります。 RPA導入を検討する際は、メリットだけでなくデメリットや注意点も理解しておくことが重要です。
自動化に適した業務の特徴
多くの資料で、RPAによる自動化に適した業務の特徴として、以下の3点が挙げられています。
1. 定型業務であること
RPAは、あらかじめ設定されたルールや手順に従って動作するため、手順が明確化・標準化されている定型業務の自動化に適しています。 一方で、ルールが複雑であったり、都度判断が必要となるような非定型業務は、RPAによる自動化が難しい場合があります。
具体的には、請求書発行、入金消込、勤怠管理、在庫管理、顧客情報の登録といった作業が含まれます。これらの業務は、あらかじめ作業手順が定まっているため、RPAに処理ルールを明確に定義しやすく、自動化によって効率が上がる業務です。
一方で、顧客対応や人事評価のような業務は自動化が難しい分野です。これらの業務では、状況に応じて柔軟な対応が求められるケースが多いため、ルールベースの処理を得意とするRPAでは対応が難しく、人の判断や適応力が不可欠です。
具体例
- 請求書作成業務: 営業システムから注文データを取得し、請求書作成システムに入力、印刷するまでの一連の作業を自動化
- 発注リスト転記業務: 顧客から受信した発注リストを、自社の受発注管理システムに転記する作業を自動化
- 入金確認業務: ネットバンキングから入金リストを取得し、顧客管理システムに入金チェックを入れ、担当者に通知する作業を自動化
- 勤怠管理: 勤務時間の集計、残業時間の確認、有給休暇の残日数確認などを自動化
- 在庫管理: 在庫数や出荷予定数を営業担当者に自動メール送信する作業を自動化
- 顧客情報のシステム登録: 新規顧客獲得時の顧客情報を、複数のシステムに自動登録
- 交通費精算: 申請された経路や金額が適切かどうかを自動で確認
2. 大量のデータを扱う業務であること
RPAは、人間よりも高速かつ正確に大量のデータを処理することが可能です。 そのため、大量のデータ入力や集計、転記などを伴う業務を自動化することで、大幅な時間短縮とヒューマンエラーの削減を実現できます。
具体例として、競合他社の価格調査やSNS上の口コミ収集が挙げられます。これらの業務では、大量のWebページやSNS投稿を分析する必要があるため、RPAを活用することで効率的に情報を収集・分析することができます。
一方、自動化による効率化があまり見込めない業務には、例えば顧客ごとに個別対応が必要な請求書発行業務が含まれます。データ量が少なく、各顧客に合わせた対応が求められる業務の場合、RPAのようなルールベースの自動化ではかえって手間が増える可能性があり、効率化のメリットが小さいことがあります。
具体例
- 競合他社の価格調査: 各社のWebサイトから価格情報を収集し、Excelにまとめる作業を自動化
- SNS上の口コミ収集: 各種SNSから自社に関する口コミ情報を収集し、分析する作業を自動化
- 入金消込業務: 銀行口座の入金情報と請求書データを照合し、消込処理を行う作業を自動化
- 売上日報作成: 複数の店舗の売上データを集計し、日報を作成する作業を自動化
3. 反復的に行われる業務であること
同じ作業を何度も繰り返す業務は、RPAによる自動化によって大きな効果が期待できます。 毎日、毎週、毎月など、定期的に発生する定型業務をRPAに任せることで、担当者はより重要な業務に集中できます。
日次レポート作成、メール配信、 交通費精算などが適しています。これらの業務は、毎日あるいは定期的に発生するため、RPAで自動化することで、担当者の負担を大幅に軽減できます。
具体例
- 日次レポート作成: ECサイトのアクセス状況や売上データなどを集計し、レポートを作成する作業を自動化
- メール配信: 会社説明会などのイベント告知や、応募者への面接日程のリマインドメールなどを自動送信
- 問い合わせ対応: フォームからの問い合わせに対して、定型的な回答を自動返信
他にも、PC上で完結する業務やルールが明確で、変更が少ない業務は自動化に向いていますが、人の判断や創造性を必要とする業務には適していません。また、AIなどの技術と組み合わせることで、RPAの適用範囲は広がりますが、現状ではRPAで自動化できない業務も存在します。
RPA導入は、業務効率化を図るための有効な手段の一つですが、万能ではありません。 自社の業務内容や課題を踏まえ、適切な業務を選定し、RPAを効果的に活用することが重要です。
RPA導入による業務効率化最大化のためのステップ
RPA導入を成功させ、業務効率化を最大限に引き出すためには、適切なステップを踏むことが重要です。
1. 準備フェーズ: 目的明確化と現状分析
RPA導入を成功させるためには、まず導入の目的を明確にすることが重要です。具体的にコスト削減、業務効率化、従業員満足度の向上など、どのような成果を目指すのかをはっきりさせることで、導入後の効果も測定しやすくなります
次に、現在の業務プロセスを詳しく分析します。どの業務にどのくらいの時間がかかっているのか、頻繁にミスが発生している業務はどれかを確認し、この分析結果をもとにRPA導入の効果が見込める業務を特定します。
その上で、自動化に適した業務を選定することも重要です。RPAは万能ではないため、以下のような特徴を持つ業務に特化して導入するのが効果的です。たとえば、手順が明確化・標準化されている「定型業務」、大量のデータ入力や集計、転記を伴う「大量のデータを扱う業務」、そして毎日、毎週、毎月と定期的に発生する「反復的に行われる業務」がRPAに適しています。
RPA導入の投資対効果も検討しましょう。導入と運用にかかるコストに対して、自動化による効果がそのコストを上回る業務を選定することで、RPA導入の効果を最大化できます。
2. 設計フェーズ: シナリオ作成とテスト
RPA導入におけるシナリオ作成とテストのプロセスでは、まず自動化する業務の「業務フロー」を詳細に作成することが重要です。業務フローをきちんと整備することで、RPAのシナリオ作成がスムーズに進み、効率的な自動化が可能になります。
次に、RPAツールの選定に進みます。自社の環境やニーズに合わせて、クラウド型やオンプレミス型など、最適なRPAツールを選びます。ツール選定は、後の作業やメンテナンスのしやすさにも関わるため、慎重に検討することが求められます。
その後、業務フローに基づき、RPAが実行する手順を具体的に定義した「シナリオ」を作成します。このシナリオ作成の段階では、現場の担当者の意見や知見を取り入れることが大切です。実際の業務を理解している人の視点を反映することで、より現実的で効果的な自動化が実現できます。
シナリオ作成が完了したら、次にテスト環境でシナリオを実行し、想定通りに動作するかを確認します。この際、エラーが発生する可能性を考慮し、エラー発生時の対応も事前に検討しておくことが重要です。
また、例外処理もあらかじめ定義しておきます。たとえば、処理できないデータが発生した場合に担当者に通知する、といった対応を組み込むことで、想定外の事象に対してもスムーズに対応できる体制を整えることができます。
3. 運用フェーズ: 導入・運用・効果測定
RPAの導入が完了したら、運用フェーズに移行します。まず、テストが完了したRPAを本番環境に導入しますが、導入後も継続的なシナリオの改善やメンテナンスが必要です。適切な運用体制を構築し、安定的な稼働を目指しましょう。具体的には、担当者を決め、定期的なメンテナンスやトラブル発生時の対応方法を明確化しておくことが重要です。
導入後は、定期的に効果測定を行い、当初の目的を達成できているかを確認します。効果が十分でない場合は、シナリオの見直しや、業務プロセス全体の改善を検討することが求められます。
RPAの導入はゴールではなく新たなスタートです。業務プロセスやRPAツールが進化する中で、シナリオの改善や業務プロセスの見直しを継続的に行い、さらなる効率化を目指していきましょう。
また、RPA導入を成功させるためには、業務プロセスが変わるため、現場の担当者の理解と協力が不可欠です。 導入前に十分な説明を行い、不安や疑問を解消しておきましょう。そして適切なセキュリティ対策も重要です。アクセス権限の設定やログの管理など、セキュリティを確保するための対策を講じましょう。
業務効率化と自動化を継続させるためのポイント
業務効率化と自動化を継続的に成功させるには、RPA導入時だけでなく、運用開始後も継続的な取り組みが必要です。 以下に、継続的な業務効率化と自動化を実現するためのポイントを紹介します。
1. 定期的な効果測定と見直し
RPA導入後、定期的に効果測定を行い、当初の目的を達成できているかを確認することが重要です。 効果が低い場合は、シナリオの見直しや業務プロセス自体の改善を検討します。
RPAは導入したら終わりではなく、継続的な改善が必要です。 業務プロセスやRPAツールの進化に合わせて、シナリオの改善や業務プロセスの見直しを行い、さらなる効率化を目指しましょう。
2. 柔軟な対応とシナリオの改善
RPAは設定されたシナリオに沿って動作するため、業務プロセスに変更があった場合は、シナリオの修正が必要になります。社内で使用するシステムやツールの仕様変更があった場合も、RPAの修正が必要です。
RPAの運用中にエラーや不具合が発生した場合には、速やかに対応し、再発防止策を講じる必要があります。
3. 運用体制の維持と人材育成
RPAを安定稼働させるためには、適切な運用体制の構築が不可欠です。担当者を決め、定期的なメンテナンスやトラブル発生時の対応などを明確化しておく必要があります。
RPAのスキルを持った人材を育成することも重要です。社内でシナリオ作成やメンテナンスができる人材がいれば、RPAをより効果的に活用できます。RPAに関する情報共有を積極的に行い、誰でもRPAの仕組みや操作方法を理解できるようにしておくことが、属人化を防ぐために重要です。
4. RPAツールの活用範囲の拡大
RPAツールは、単純な作業だけでなく、AIなどの技術と組み合わせることで、より複雑な業務も自動化できるようになってきています。AI-OCRなどの技術を活用すれば、紙文書のデータ化なども自動化できます。
RPAツールが進化するにつれて、自動化できる業務範囲も広がっていく可能性があります。新しい技術やツールを積極的に検討し、RPAの活用範囲を拡大していくことで、さらなる業務効率化を目指しましょう。
ただし、RPAで何もかも自動化しようとすると、かえって非効率になる可能性があります。 RPAの得意・不得意を理解し、人間とRPAが適切に役割分担することが重要です。
5. コミュニケーションと協力体制
RPA導入は、現場の担当者にとって大きな変化となる可能性があります。 導入前に十分な説明を行い、不安や疑問を解消しておくことが重要です。
RPA導入後も、現場の担当者とコミュニケーションを密に取り、RPAの効果や課題を共有することで、よりスムーズな運用を進めることができます。
6. セキュリティ対策
RPAは機密性の高い情報を扱う場合もあるため、適切なセキュリティ対策が必要です。 アクセス権限の設定やログの管理など、セキュリティを確保するための対策を講じましょう。
RPA導入を成功に導くために
業務効率化と自動化を継続的に行うためには、RPA導入をゴールと捉えるのではなく、あくまで業務改善のスタート地点と捉えることが重要です。 積極的に新しい技術やツールを取り入れ、継続的な改善を続けることで、より効率的で生産性の高い組織を目指しましょう。
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